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夏休みの過ごし方と人生初めての大腸内視鏡検査。

世間的には4連休、僕は夏季休暇3日間を組み合わせて9連休にしていたので今年の夏休みは随分と長かったが、これまた見事に特にどこに行くでもなくシンプルに休む事に終始したのであった。
断腸の思いでライブ出演を自粛したわけだが、その頃はまだ『県を跨いだ移動は自粛して下さい』という論調だったもんだから感染症対策はバッチリである、との情報も得たので映画館へ行ったりもした(余談だけれどもこれを書いている26日現在、市内でもどんどん感染者が増えている。これはもう不要不急の外出は控えねばならない奴だ。状況はどんどん変化している)。思えば当時は今より内的な悲壮感もなかった気がする。

何を観に行ったかと言えば『起動警察パトレイバー THE MOVIE』で所謂パトレイバーの劇場版一作目だ。パトレイバーにハマった頃に当然、この劇場版一作目は観たのだが今回はサウンドリニューアル版の4DX上映との事。また、まさか映画館でパトレイバーが観られるとは思っていなかったので情報を聞いた当初から是非行きたいと思っていたのだがタイミング悪くコロナウイルス感染拡大で上映も延期、ようやくこのタイミングで観に行く事が出来た。今の状況を鑑みるとあのタイミングでしか映画館に行く、なんて出来なかっただろうから(神経質かもしれないが僕は小心者なのでとりあえずリスクは現状避けておきたい)決断して良かったと思う。

さて、肝心の感想だが一言で言えば最高。最高以外の何物でもない。4DXは初体験だったのだがアトラクション感があって楽しいし、映画的にも4DXが映えるタイプのものだっただろうから楽しかった。結構ゴツゴツ動くんだな、4DX!
改めて映画としてパトレイバー 劇場版一作目を観るとやはり作品としての強度が物凄く高い。89年にあのテーマで作品を作り上げた事が時代を先取りしまくっているし脚本も押井守っぽい演出も(まだ劇場版二作目程色濃くない)効いている。
最高に楽しかったなぁ!

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そして9連休中、実はこれまた人生初の大腸内視鏡検査を経験したのだった。
事の発端は妻と娘と実家に顔を出している際、排便すると便に血が混じっており、お尻を拭いた紙を見ると真っ赤になっている。
以前も同じような経験があり、その際は切れ痔との診断だったので今回もそうであろうと思ったのだが、何の気なしに妻に話をすると横で聞いていた母が「絶対に病院に行きなさい」と強く薦めてくる。前回切れ痔の診断を貰った時は20代後半だったし確かに年齢も年齢だったので安心する為に前回尻の穴を診て貰った病院に行ったのであった。
歴史が長い病院であるし尻の穴関係であれば名古屋では有名な病院であるからして、月曜の午前中、診察開始時間と同時に飛び込んだもののやはり待ち時間は相応にあったが今回もやはり切れ痔との診断を貰った。
その折に「妻と母より心配な病気ではないか気にかけて貰ってまして」と話すと医師より「それじゃあ折角だから、大腸内視鏡検査、やりますか。安心するよ」と言葉が返ってきた。
なんだか大掛かりな事になりそうだ、とも思ったけれどもこういう機会には徹底的にやった方が良い、お願いしますと答えた。
血液検査を受けて入院の説明を聞く。前日夜、下剤を飲む事、当日は絶食する事、一日仕事になるであろう事、場合によっては入院になるからその場合の用意も念のためしておく事、帰りは家族の者に迎えに来て貰うように、等と話を聞き、料金についても説明を受ける。
ポリープ等なく、検査だけで済めば当日朝に支払う検査補償金の範囲内で済むであろうとの事。これは実際その通りで補償金2万円を支払った後、帰宅時に半分くらい返金された。つまり約一万円で安心を買えたわけだ。安いもんである。
日時についてはこちらから「可能な限り早く」とお願いすると翌々日に出来ますよ、という事だったのでそうお願いした。全てが連休中に解決すればしめたものである。

検査前日、指定された時間に下剤を飲む。錠剤3錠を液剤を溶かした水で飲み下したわけだが、よく漫画であるような飲んで直ぐに効果が出るわけではなかった。実際、服薬後30分で排便があったものの今思えばこれは生理現象によるもので、翌日早朝5時頃、便意で目が覚めてからの排便以降が下剤の効果によるものであったと思われる。

当日、絶食し妻に病院まで送って貰う。何分初めての事だし検査結果も気掛かりではあるので若干緊張するが、受付で名前を呼ばれ病棟に案内される頃にはちょっとワクワクしている自分がいた。
9時に名前が呼ばれ9時15分頃から説明が始まった。この日大腸内視鏡検査を受けるのは合計7人いるそうで、その内4名は入院しているようで僕と同じように受付に集合したのは僕以外に日焼けした壮年の男性Aさん、上品そうな女性Bさんの二人だった。僕が一番若造だ。話を聞くとお二人とも経験者のようで
Aさん「この病院も綺麗になったよねえ、昔はもっとボロボロだったのに」
Bさん「本当ですねえ」
と、そんなやりとりからも慣れている感がひしひしと伝わってきた。
個別に説明を聞き、こちらの家族構成やら体調やら問診を受けて下剤を飲み始めたのが9時35分。
最初の一杯は体に合うかわからないので用心の為15分かけて飲んで下さい、との事で問診を受けながら飲んでいく。一口飲んで思わず「美味しい!」と口に出してしまう程、想像していたよりも下剤は飲みやすかった。「大腸内視鏡検査で一番しんどいのは大腸の中を綺麗にする事だ」と人伝に聞いていたのでどんな酷い味のものが出てくるのかと戦慄していたのだがむしろ味の良いものでホッとした。味の濃い、多少トロミのついたスポーツドリンクのようである。これならグビグビ飲めてしまいそうだ。

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この下剤と水(ここは持ち込んだお茶、無糖の紅茶でも良い、とされていた)を交互に飲んでいく。排便の時間の記録を取るように、と書き込む為の用紙、クリップボードとボールペンを渡された。トイレの個室にはブザーが付いており、排便4回目以降は毎回便を流す前に看護師に見せて下さい、との事であった。
「では用意スタート!」ではなかったけれども案内された病室で3人が各々のペースで下剤と水(またはお茶)を飲んでいく。僕達3人は大部屋に6つ並んだベッドの中の、ソーシャルディスタンスを保つように離れた位置のものをあてがわれていたのだが黙って黙々と飲むわけにもいかずポツポツと会話が始まるのであった。

Aさん「昔はここに入院しててさ、結構日数があったもんだから皆で麻雀とかやったりしたんだよね。あと宴会とか」
Bさん「宴会!それっていいんですか!」
Aさん「勿論お酒は飲まないけどさ、お菓子とかジュースとか、皆でワイワイやってねえ。楽しかったなあ」

折角だから話に混ざりたいのだが僕だけ素人だ、ここは謙虚にいかねばならない。相槌がわりにニコニコ頷いていたら2人の視線が僕に向いたような気がした。自己紹介がわりに、ではないけれど
「今回が初めてなんです。緊張してます」
と僕。
以降はすんなりと会話に混じる事が出来た。
会話といっても勿論、間に不定期な排便が混じってくるので話しっぱなしではない。ポツリポツリと、排便よりは多くそして賑やかに、3人は言葉を交わすのであった。
会話の中心になるのはAさん。どうやらもう右手の指の本数以上は内視鏡検査を受けているらしい。プロだ。僕はAさんをプロ、と心の中で呼ぶ事にした。プロ曰く下剤も随分と飲みやすくなったようで、昔はそれはそれは飲むのがきつかったそうだ。
看護師さんとのやりとりも手慣れたもので、それが良いのかわからないけれど慣れた様子からは本当に玄人感が感じられた。
以下、プロのプロらしい様子。

・看護師さんから「4回目以降は毎回見せて下さいね、便」と言われていたのは前述したが、Aさんはどうやらその言葉通りにしていなかった。何故か排便のタイミングが重なった事からわかったのだが、Aさんは自分で看護師さんに便を見せるタイミングを計っているようであった。曰く「透明で、小便よりも少し色が濃くなった頃に呼びゃあいいんだよ」

・腹をさすりながら「今回はなかなかおりてこねえなあ」と呟く様。これは本当にプロっぽかった。「そういうものなんですね、毎回違うもんですか」「そりゃあ違うよ、体調によりけりじゃないかな」「成る程」

・落ち着いた上品な女性Bさんはなかなか下剤が進まないようで(一方僕は美味い美味いとグビグビ飲んだらプロに「いや、ペース早過ぎるよ」と窘められた)一時間半の間に一リットル飲んで下さいね、と言われていたけれど一時間経過した段階でまだ半分くらいしか飲めていない様子だった。Bさんがトイレに行っている間にBさんの下剤の残量を見たAさん「可哀想に、この子、ここからペース上げなきゃならねえぞ...」

実際僕達が一緒に過ごしたのは一時間半の事であったのだが、このポツリポツリと交わした会話や、これは初心者故の感情かもしらないけれども同じ境遇に置かれた者故の感情移入故か僕はAさんBさんに愛着さえ感じていた。
もっとお話したい、と思ったが僕の便は次第に液体になり(排便、というよりポンプのように水を押し出すようになるのだった。「うおおおお、俺は人間ポンプだ!!!」と妻に思わずLINEした)、検査を待つ病室へと案内された。最初に案内をされたのが僕だったので部屋を出る間際、Aさんに目礼を送ったのだがプロはこちらのそれに気付く素振りさえないのであった。その素っ気なさもプロらしさに拍車をかけて僕は思わず(徹底しているなあ...!)と感動さえ覚えたのであった。
検査を待つ部屋は大部屋との事であったが実際は二人部屋で、しかももう片側のベッドには誰もおらず事実上僕の個室であった。これはラッキー、と待ち時間を映画配信アプリで時間を潰すのであった。

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大部屋に案内されてからは検査用の下着に着替え、お借りした院内着に着替えて検査の順番を待つ。いつ順番が来るかはわからないとの事だったのでこりゃあ本当に夕方になるかもしれないな、と思ったが食塩水の点滴を受け始めて約一時間後、看護師さんが僕を検査室へと導きに現れた。

点滴のキャスターをカラカラ押しながら検査室へ向かう。なんだか、凄くそれらしいな、と呑気に思ったのも束の間、直ぐに検査台に横になるように言われいつでも検査を始められるような態勢になり先生がやってくるのを待つ。
血圧をモニターする機械に繋がれているもんだからピッ ピッという音が絶え間なく鳴っている。うわあ、ちょっとドキドキしてきたぞ。
看護師さんも皆、感じが良かったけれどもこれまた感じの良い先生がやって来て「舟橋さん、年齢が年齢だけに可能性は低いけど、ポリープとかあったらとっちゃっていいかな?」と念押しの確認をする。「お願いします!とっちゃって下さい!」と答えた後に(気合い入れ過ぎたかな)と自分の様子に不安になる。
そんな僕のドキドキはどこ吹く風、「じゃあ麻酔入れていきますからねー」と右腕に繋がれた点滴が途中から差し替えられていく。
事前に「麻酔を入れられると一瞬で意識を失う」と聞いていたから出来るだけ争ってやるぞ!と心に決めていたので(よし、絶対にギリギリまで我慢するぞ!)と思ったのが最後の記憶。「はい終わりましたよー」と起こされて気がつけば僕の人生初の大腸内視鏡検査は終わっていたのであった。

隣室に車椅子で案内され、実際の映像を見てみる。「綺麗なもんですよ舟橋さん、良かったね!」とマスク越しでもわかる先生の笑顔にホッとする。まだ麻酔が残っているのか頭がぼーっとするが、これは嬉しい。
「これは、コーンかな?」
見ると画面内に黄色の固形物が写っていた。コーンなんて食べてないぞ、あ、いや待てよ。朦朧とした脳味噌で前夜、娘が残したコーンを何の気無しに口にした瞬間を思い返した。
「コーン、ですね」
「あはは、コーンだね」
この瞬間は恥ずかしかった。
それにしても妙にお腹が痛い。身体を真っ直ぐに出来ない程だ。手術後はたまにあるらしい。帰宅後におならが沢山出たのでひょっとしたら体の中に空気が入ってそれでお腹が痛かったのかもしれない。

部屋に戻り、着替えをし、実家の父に迎えの依頼の電話をする。痛いお腹を守るように体をくの字にしてウトウトする。
気がつけば一時間ほど眠ってしまっていたようでナースコールで目が覚める。
どうやら父が迎えに来てくれたようだ。
まだ麻酔が残っているのかフワフワする。
フワフワしたまま、保証金からの返金部分を受け取りエレベーターに乗り、受付でお礼を言い父の車に乗り込んだ。母も迎えに来てくれておりひとまず検査の結果全く異常はなかった事、兎に角腹が痛い事、そして麻酔がまだ効いている事を伝えた。

家に帰ると妻と娘が迎えてくれた。
娘が食べていた唐揚げの残りを口に入れたものの、朝から何も食べていない割には空腹感がない。検査が終わったら焼肉だ!と盛り上がっていたのに残念無念。
腹が痛かったのでベッドで横になると程なくして眠ってしまったらしい。妻に起こされると夜の11時。どうやら6時間近く眠ってしまっていたらしい。気遣ってくれた妻に感謝。

翌日からはフルスルットルで元気になりました。いやはや、実際年齢が年齢だけに検査しておく事の大切さ、安心感は痛感した。
来年は会社の支援を受けての人間ドッグに挑戦する予定です。
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出演辞退をした話。

19日は本来であれば鈴木実貴子ズのサポートで大阪『お魚フェス』に同行、ベースギターをブイブイ弾き倒す予定であったのだが新型コロナウイルスが再び感染拡大している状況を鑑みて、僕は出演を辞退させて頂いた。
これは僕の、自分自身の選択であり誰かに強制されたものではない。

体は元気そのもの、また楽器の状態も万全だし何より気持ちはもう完全にワンショットワンキル、一音で何人の心を撃ち抜く事が出来るのか(サポートであれなんであれ、人前で弾く以上その精神は持ち合わせるようにしている)やったるぜ的な精神状態であったのでその決断を下した時は無念でならなかった。
何より鈴木実貴子ズの2人、そして同じくサポートメンバーである各務君に伝える時は大変申し訳ない気持ちで一杯であった。新型コロナウイルスの感染状況が一気に拡大してきた(キャンセルを決めた時は大阪にて三日連続、毎日20名を超える感染者が確定した時分であった)タイミングであったにせよ、何せ土壇場でのキャンセルである。

僕はバンドマンであると同時に夫であり父であり会社員である。結婚以降いついかなる時も最善の相談相手として存在してくれている妻も「今回はしょうがない」と夫として父としての僕の決断を支持してくれたし、仕事柄僕が万が一にでも感染すれば多くの人をリスクに晒す事になる。その中には無症状や軽症では済まないであろう高齢の方も大勢いらっしゃるだけに会社員としてもこの選択は間違いではなかった、と思っている。

だがしかし、ここから先は完全な泣き言だ、だがしかし、バンドマンとしてはどうか。
色々なものを兼ねながら、言ってしまえば趣味の範疇でやっているに過ぎないバンド活動ではあるけれど、それでも矜恃は持っているつもりだしプライドも意地もある。出演辞退なんて本当、初めての事じゃないだろうか。自分で決めた事とは言え、滅茶苦茶悔しい。悔しいとは違うな、なんだろうな、滅茶苦茶不甲斐ない気持ちになる。完全に僕一人の話だし同一の選択を選んだ他人を貶めるつもりは全くないし他の人に対してそんな風に微塵も思わないのだけど、出演辞退を決めてそれを鈴木実貴子ズの二人、各務君に伝える際には「ああ、俺は敵前逃亡を決め込むんだな」となんとなく、思った。
今まで何度も「最低だ」と思ってしまうような演奏はしてきた。けれどもそのいずれも価値があった。人前で最善を尽くそうとその瞬間その瞬間に尽力したからだ。だがしかし今回は理由が理由だけに誰も僕を責めやしないし糾弾もしないが、出演辞退である。情けないねえ、不甲斐ないねえ。

だが、これが色々な立場を兼ねながら自分の好きな事をやっていくという事だ、とも思った。その瞬間その瞬間、どうすべきかどれがベストの選択なのか何を選んで何を捨てるのか、優先順位は、(自分の中の)あっちを立てるのかこっちを立てるのか、どう在るべきなのか。板挟みになりながら選んでいく方法論を選んだのだ、僕は。覚悟はしている、していたのではないか。何か一つを徹底的に突き詰める者を横目に「あれも欲しいこれも欲しいもっと欲しいもっともっと欲しい」と欲しいもの手が届くもの全部を手に入れて、抱え込んで、そして全部維持する、していく。
俺は強欲な人間ではなかったか。ならばこれからも判断を迫られる瞬間は必ずやってくる。迷い続けろ。

当日、集合時間に集合場所に顔を出した。
演奏開始時間には西の方角に念を送る、と半分冗談、半分本気で声をかけた。

後日、演奏を各務君が録音したものを聴き、高橋君が仕込んで撮影したライブ動画を観た。
やっぱり滅茶苦茶格好良かった。いやだけどやっぱり、くぅぅぅぅ、ベース弾きたかったなぁ!!!

ベースのローに参った夜。

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正直なところ、もっと劇的な感動が継続するかと思っていた。

環境がそれ以前とそれ以降で激変し、まだ決着はついていないものの状況の改善が認められた中で(一度は認められた、とならない事を願うばかりであるが如何せん、先の事は誰にもわからない)演奏活動が再開され、人前で演奏出来る事への感謝と劇的な感動がもっと継続するかと思っていた。
感謝の念自体は、ある。というかないわけではない。
人前で演奏するなんて元々大それた行為だと僕は思っているし、その行為自体は人、他人がいないと成立しないからだ。そして今や僕達が演奏する瞬間に人がいる、そのシチュエーションを「選ぶ」事自体がゼロリスクではないのだから。
演奏家としての感謝はそこにはある。

だがしかしリハビリテーションと銘打って演奏活動を再開した鈴木実貴子ズに連動してサポートメンバーである僕も演奏活動を再開する事が出来たわけだけれども(つまり同時に演奏家として鈴木実貴子ズの二人にも感謝している事をここに明記しておきたい)、その当初に感じた「人前で演奏する事が出来る」という感激は今や完全に「オイコラこの野郎」とこれまで演奏する時に感じていた必死さの背後に隠れてしまった。
つまり、演奏中の精神状態は完全にそれ以前と何ら変化なく、結局僕のように余裕のない目先しか見る事の出来ない人間はどうしたって目の前の演奏に注力する事くらいしか出来そうもないのであった。
演奏の前後、というか主に後だが、ようやく緊張から解き放たれ一息つきながら「いやはや、それにしてもこんな状況の最中でどうにか今夜も無事にやり通す事が出来たなあ、ありがてぇなぁ」と思い返す事はあるのだけれど。

どうやら僕は相変わらず鈍臭く、自分の心持ちをアップデートする行為よりももっとその前の段階、自分の演奏をアップデートする事くらいしかまだ手が届きそうにないのであった。
人としての在り方は演奏家としての矜持とも密接に結びつくものであろうからして、在り方自体が表現でありたいくらいの気概を持つ身としては何かしらのアティチュードを示す事が出来たら良かったのだろうけれども、つくづく僕って奴は凡庸な奴だ。

随分と長くなったけれどもそんな事をつらつらと考えたりしたのが鈴木実貴子ズに同行して行った奈良NEVERLANDでの演奏の日。
7月11日の事である。

リハーサル終盤にそれまで割と快適に演奏出来ていたのだけれども、どうにもふとした瞬間にローが暴れる感じがするというか、フィードバックを起こしているような感じになってしまった。
どれだけ優しく撫でるようにピッキングしても「ブオー!」と吹き上がる低域がベースサウンドを覆い隠さんとするし、これは鈴木さんも歌いづらかろうと思ったら案の定「ベースの音が凄く、くるんだけど」と歌いづらそう。そりゃそうだ、弾いてる本人でさえ戸惑う程の状況である。どうやら上手の各務君、ドラムセットの中に位置する高橋君は気にならない様子。
原因を究明しようと思ったがこういう対バン形式の日のリハーサルあるあるというか、何かを改善しようにも時間切れになる日というのが正直なところたまにあるのだが、その日はまさにそんな日だった。
「本番前の転換中に対応するよ」と請け負ったものの頭の中では必死である。原因を解明せんとリハーサルのセッティング時から何が原因がなかったか反芻してみる。...どうにも心当たりがない。
フィードバックを起こしたような、とは書いたもののフィードバックってわけでもなさそうなんだよなあ。

本番中、演奏しながら鈴木さんの顔色を伺うのは良い結果を思い浮かべられない。
いや別にこれは鈴木さんに気を遣うのが、というわけではない。どんな具合だい大将!と様子を見るのとこれで大丈夫なのかな...と心配するのは同じ気遣いでも演奏する際の心構えが大きく違うのだ。

ベース単体で鳴らした際は異変は感じられなかったので、どうやらアンプで起きている異常ではなさそうな気がする。
では一体何が原因で、と頭の中でああでもないこうでもない、とやっているうちに時間は流れあっという間に本番の時刻となった。

転換中、音を出す際に予めアンプのボリュームと低域のEQを少しだけカットしてやる。
弾いているとどうだ、とても快適ではないか。しめしめ、と思ってまたピッキングすると今度は吹き上がるような低域が。手元のニュアンスも何もあったもんじゃない、明らかにロー、出過ぎである。注意深く聞いてみるとどうやらメインスピーカーから出ている外音と合わさってとんでもない暴力的なローになっているようだった。
どうやら外音では結構な低域が会場を震わせているようだった。こんな経験は初めてだったが、メインスピーカーから反響して聴こえてくる低域と、すぐ背後で背負う形になるベースアンプのスピーカーから出てくる低域と、それらが合わさった際に丁度良くなるようにベースアンプ側の出音を更に微調整する(この段階でPAさんに声をかければ良かったのだろうけれどもこの段階で外音のバランスを崩すのは本意ではなかったし、こういう時は自分の手で対応を取った方が手っ取り早いと思ってしまう気質なのである)。
うん、今度こそ良くなった。完全に、良い具合だ。

この微調整によって状況が改善された事が演奏を始めてからも僕のテンションを上げてくれたし、何より微調整によりエッジのあるアタックに必要最低限だけれども豊かであるローのバランス感がとても良く、弾いていて気持ち良かった。録音、録画によりこの日の演奏を振り返ってみたけれどもやはりベースの出音は良いなと思えるものだったので、やっぱり試行錯誤して良かった。

テンション高いまま、演奏を終える事が出来た。
もっとやれたのにな、という気持ちこそあったものの、前回より少しは成長出来たと感じられる演奏を自分自身する事が出来たのでそれは良かった。もっと貢献したい、と思う。
「こう言うと上からみたいになってしまうけど、舟橋さん最近、鈴木実貴子ズのベースの音、わかってきたよね」と演奏後に鈴木さんに言われたのがこれまたとても嬉しかった。
うん、僕自身そう思う。その時その瞬間に鳴っていて欲しい音が出せるようになってきたと思う。
エレクトリック・ベースギターという楽器はバンドアンサンブルの中で筋肉の役割を務めるものであるというのが自論だが、同時にエレクトリック・ベースギターは空間をデザインする楽器だとも思っている。

少しは表現力が上がっただろうか。

金言

先日、奈良へ演奏に行った日の事を日記に書こうと思っていたのだが。
職場の偉い人から言われた言葉が大変、心に残っている。

「舟橋君、どんどん失敗を積み重ねなさい。順風満帆にきた失敗知らずの奴は失敗した時に取り返しのつかない失敗をする。挑戦して失敗して、失敗を反芻してまた挑戦して、を繰り返しなさい。必ず肥やしになるからね」

凄い言葉だ、これは。グッときた。
失敗を肯定する事で挑戦のハードルを下げ、挑戦を後押しする事で循環を作り出している。そして失敗を重ねる事が成功への方法だ、と伝える事で全てを肯定的に捉えるように促している。
まるで言葉の永久機関。しかもこれを立場が上の人が言う事で滅茶苦茶『その気』になるという、いやこれは凄いな。
僕のように熱しやすいタイプはこういう言葉だけでしばらく燃え続ける事が出来る。金言として心の中にしまっておこう。時々取り出しては磨きをかけて、そしていつかこの言葉で人の心を打つ日が来る事を夢想しようじゃあないか。俺も昔先輩から言われたんだけどね、と添えて。

今まで『奈良の鹿』=俺『なら』出来る、俺『しか』出来ない、という言葉が大好きで時折思い出しては奮起していたのだけど、こういう人からの言葉で火がつく精神状態で本当に良かったなと思う。毎日楽しい。

鈴木実貴子ズ ワンマン@今池HUCK FINN そして位相の話。

7月3日、久しぶりに大きな音が出せるライブハウスにて演奏。
鈴木実貴子ズのワンマンライブ@今池HUCK FINNだった。

この日も十分な音量ではあったのだが体にビリビリくる音量っていうのはやっぱり格別であり、そりゃあ僕も「大切なのは音量ではなく表現力だし大きな音が出せる事自体は決してスキルでもなんでもない」とか嘯いてきたけれど、ライブハウスのステージの上で鳴らされる大音量の前ではそんな口上も消し飛ぼうってもんである。
俺はやっぱりベース・アンプリファイアを通して十二分に増幅されたエレクトリック・ベースギターの音に己の気持ちを込めて演奏したいのである。
いや、この日もなんだかんだ結構出してたんだけどね、音量。

実に緊急事態宣言以降、この日で今池HUCK FINNもライブ公演はまだ2公演目だったそう。
コロナ禍を経てその存在自体が危ぶまれたライブハウスという場所がこれからどのようにその在り方を変えていくのか、僕のように見識も狭ければ渦中で歯を食いしばるわけでもない人間には断定出来ないけれど、この日の今池HUCK FINNは細心の注意と配慮と、そしてその場にいた全員にお互いへの配慮があった。
リスクを踏まえた上で尚、そのリスクを低減させる配慮。『新しい生活様式』というような事が言われ始めたし事実ライブハウスが以前のような光景を取り戻すのか、そしてそれにはどれだけ時間がかかるのか、それとも全く別の光景が繰り広げられるのか、どのような時間を経ようともこの日今池HUCK FINNで過ごした時間は少なくとも僕にはこの先への希望を感じるには十分であった。

そしてこの日のPAはナベちゃん。
以前「舟橋君のベースは位相が逆相になってるかもね。今まで違和感なくやってきたなら気にする必要もないけど」とナベちゃんに教えて貰って、少しだけ位相について調べてみた。

どうやらバスドラムが踏まれた瞬間の音の出方を正相とし、位相が乱れているとノイズキャンセリングイヤホンのようにバスドラの音とベースの音がお互いに干渉して音の聴こえ方にも影響が出てしまうようだ。同様にベースのラインシグナルとマイク録りした音も位相が反転していると干渉しあって迫力のない変な音になってしまうとの事。
ライブの現場についてはきっと今までPAさんが日常的な仕事の範疇で手を入れて来て下さった(思えばそれらしいやりとりをミキサー宅のPAさんとステージスタッフの方の間で交わされているのを耳にした記憶も何度か、ある)のだろうけれども、バスドラとベースの音についてはこれ、普段のスタジオ練習から影響あったんじゃないか?
結局「特に弾いてて違和感もなかったわけだしライブの時は専門家に任せよう」と割り切ってこの日まで過ごしてきたものの、終演後にナベちゃんとファズやらリサイクルショップの話やらしている時に再び位相の話になり、やっぱり面白そうだし気になってもうちょっと調べてみる。興味だけが募る。
で、ライブの翌日に偶然にもホームセンターに行く機会があったのでテスターを購入、自分のベースが逆相になっている事を視覚的にも確認しようと早速ケーブルを挿してチェックしてみた。
ホット側にプラス、アース側にマイナスの極を触れさせてピックアップをドライバーで叩くと確かに触れた瞬間、針がマイナス側に動く。

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「おお、逆相だ...」
続いてオーディオインターフェースに繋いでベースの信号を録音、波形を見てみると確かに波形の最初の山が下側から始まっている...。

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ピックアップのホットとアースを配線し直すだけで位相が反転するらしい、と知り妻も娘が昼寝している間に息を潜めながら簡単な電気工作。
その結果、位相が(どうやら)正相になった。
位相がどうであれ単体で聴いても変化はない。他の音と混ざった時に効果を実感するかどうか。
今まで何年も自分が当たり前のように弾いてきた環境が変化するのだとしたら、それはそれで楽しみだ。

鍛わるのか、俺の体。

新しい習慣として、まだここ数日程でしかないけれど毎晩リングフィットアドベンチャーで運動するように心がけている。

リングフィットアドベンチャー、最初に妻が「欲しい」と言った時こそどんなものかピンと来なかったが任天堂さんから発売されてる自宅で出来るエクササイズをゲームで楽しもうというものだというくらいの予備知識はあった。幸い我が家に唯一現存する(PS4は僕が余暇の使い道をどんどんと限定していきたかった際に売っ払ってしまった。尤も、PS5が発売されたらきっと買うけれど)ゲーム機のハードはNINTENDO Switchである。
新型コロナウイルスの影響で自宅で運動したい人が増えたのか、どうやらリングフィットアドベンチャーは馬鹿売れしているらしく今や購入権を抽選で当てないと購入する事が出来ないらしい。そこまでか、と思ったが妻はどうやら本気で欲しかったようで抽選に申し込んでおり、そして見事に購入権を当てたというわけだ。

そりゃあ自宅にそういうのがあるとなると僕も興味がないわけではない。妻と交代で遊んでみたところ成る程、確かにこれは良いエクササイズになる。丁度少し前に体重の他、体脂肪率等を同時測定し専用のアプリに記録する機能がついた体重計に「お前は肥満体型だぞ」と無情にも告げられたばかりだ、いっちょこれでたるんだ体を引き締めようと思い立ったわけである。

で、実際に効果があるのかというところは未所有の方は気になるところであろうけれども、まだ数日しか遊んでいない割にスクワットのやり過ぎで太腿は痛いし気持ち程度、腹筋も浮いてきた。体重もまだ誤差の範囲でしかないけれど数日前と比べると2キロ痩せている。これが本当にリングフィットアドベンチャーのお陰なら良いのだが。
負荷を日々調節してくれるのも親切だしゲームとして飽きないタイミングでイベントを挟んできたり、ストレスなくトレーニングを続けられるように配慮されていると感じた。

単純なもので夜な夜なトレーニングを重ねていると思考も脳筋じゃないけれど、そういうベクトルに向かってくる。
「デカくて太い音を出すには筋肉だ!」と思い込んだり「健全な精神は健全な肉体に宿るのだ!」と嘯いたり、綺麗にそういう発想に洗脳されつつある。

まあ、これまでも数年に一回は筋トレブームが来ていたのだけれどもね。
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自己紹介

フナハシタカヒロ

Author:フナハシタカヒロ
愛知県在住、ベースギター奏者です。

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